日清戦争に勝利した日本は台湾を手に入れ、植民地統治に乗り出す。しかしその強引な台湾統治は、数多くの抵抗と悲劇を生んだ。この本の主題である1930年の抗日霧社事件は、殺された日本人134人に対し、約4200人の日本軍、警察、軍夫らが近代兵器で、抗日タイヤル族を虐殺、成人はほぼ絶滅させられた。
聞き取り調査に20余年の歳月を費やした在野史家・登相揚による地を這うような史実発掘は、時を超えた今も日本人の胸を打たずにはおかない。本書は霧社事件の全貌を明らかにする。
【著者】登相揚(トンシャンヤン) 1951年、台湾南投県甫里に生まれる。中台医専医検科卒業。現職は医療検査技師。甫里の牛眠山で育ち、平ほ族の人々の文化の消滅と変遷に関心を持つようになる。甫里のキリスト教病院に勤務時、多くの原住民と親しくつきあい、医療検査所開業後、仕事の合間をぬって、霧社事件の調査やタイヤル族、サオ族、平甫族に関するフィールドワークを20年行ったきた。編著に『〈甫里〉平甫族古文書遡源』『甫里盆地平甫族グループの言語消滅の原因』『碧血英風』『タイヤルの素顔』などがある。
【訳者】下村作次郎(しもむらさくじろう) 1949年、和歌山県新宮市生まれ。関西大学大学院文学研究科博士課程修了。天理大学国際文化学部教授。著者・監訳書に『文学で読む台湾』(田畑書店、1994年)、『非情の山地 台湾原住民小説選』(同、1993年)ほか、論文に「台湾原住民族の現在」(『ひとものこころ 台湾原住民の生活用具』天理教道社、1993年)などがある。
【訳者】魚住悦子(うおずみえつこ) 1954年、兵庫県相生市生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士前期課程修了。国際交流基金関西国際センター日本語教育専門員。訳業に『中国 仙人のふるさと』(大阪府立弥生文化博物館、1996年)がある。
*定価2200円 A5判 232ページ
*ISBN9784889008180
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